マラソンなんて大嫌いな僕の話
1993年ころの冬。
飯田小学校のグラウンドでは大音量で「爆風スランプ」のRunnerが響き渡る中、毎朝授業が始まる前に謎のマラソンが行われている。土埃で口の中をじゃりじゃりさせながら冬の凍てつく空気で口と肺の中がカラッカラになって今にも死にそうな顔で走ってるのか歩いてるのか分からない速度で走っている小太りの少年がいる。
僕だ。
(アイキャッチ画像はAIで生成したイメージです)
冬になると何故か始まるこのイベント。何でこんな事をやるのか皆目見当もつかないが、何かスタートとゴールがすごろくのように描かれたマラソンカード的なやつが配られ、毎朝走ってそのすごろくを進めていく、というような内容のイベントだったと思う。僕にとっては全く楽しくないし全く必要のないイベント。
僕は小学校のころ、可愛いい肉まんみたいな体型でそれはそれはそれはそれはそれはまん丸でぽっちゃりしていた。むしろぽっちゃりしすぎていた。たぶん小学校6年生の時に体重が55キロ以上あったんじゃないかと思う。
でも運動神経抜群で「こんなにぽっちゃりしてるのにすごいね〜」なんて周りから言われるわけもなく全く運動できな小学生だった。特にマラソン全般が大嫌いだった。※あと鉄棒も。
理由は簡単。
疲れるから。
その後、148cmで小学校を卒業して「1年間で10センチ以上伸び続ける」という超ウルトラCをバッチリ決めた。一年ももたない学生服に母親は悲鳴を上げながら近所のお兄さんたちからお古を調達してくれた。そして僕は中学校卒業時には180cmのこの当時では中々いないレベルの高身長になった。
あんなにぽっちゃりとしていて、それはそれはそれはそれはそれはそれは可愛いらしい肉まんみたいだった僕はモデルのようなイケメン(仮)高身長になり、どちらかといえばスポーツは得意な方になった。むしろ「運動神経いいね」という側になった。
だけど幼少期に刷り込まれたイメージというかトラウマというか染みというか何だかよく分からないマラソンに対する思いは40歳を過ぎた今でも鮮明に「大嫌い」という重力を伴うぐらいはっきりとした感覚で僕の体の一部となっている。
でもそんな僕が先日、生まれて初めて学校行事以外の「マラソン大会」に参加してきた。
あ、先に言っておきます。今回もバイクの話ではありません(笑)。申し訳ありません。そして、このお話はめちゃくちゃ長いので本当にヒマでヒマでしょうがない時にでも読んでください。(絶対に長すぎると中の人から怒られると思いますが無視して書き続けます)
■「男の約束」を守れない男にはなるな。という父の教えという呪い。
じゃあ、なんで僕がそんな大嫌いなマラソンをする事になったのか。
それは僕の中での「男の約束」だったからである。
昨年の2025年に、お天気山ジャンクションの住人でもある「温泉ソムリエライダーひでみつさん」が遠方からわざわざ我々の地元で開催された「森町ロードレース大会」に出場するということで、応援しに行った。そこで、ひでみつさんが
「イッキさんも来年走ってくださいよ〜」みたいな事を言ったので「ああ・・・そうっすね!走りましょうか」というような事を返答した記憶がある。5秒前の記憶も怪しい僕なので1年前の細かいやり取りなんて全く覚えていないが、たぶんそんな感じの事を言った。それだけは覚えている。
さて。
日ごろから息子たちに「男の約束」がどれほど大事なのかを説き続けているお父ちゃん(僕)が、男の約束をやぶったら、それはもう父ちゃんの立つ瀬がありません。大変です。
そして約1年続けている筋トレの影響もあり「あれ?俺行けんじゃね?」みたいな思いも脳裏をよぎり気が付いたら森町ロードレース大会2026の「3キロ一般」の申し込みが完了していた。一人じゃ心細かったのでほぼ毎年走っていると豪語していた川崎さんを誘って。
■マラソン当日
2026年2月1日。日曜日。晴れ。絶好のマラソン日和である。
森町に生まれ森町で育ち、35年以上森町に住んでいたのにも関わらず、会場に行ったのは去年が初めて、参加したのは今年が初めての僕。行くまでは「どうせ森町のマラソン大会なんて地元の小学生とか中学生とかばっかでしょ」って思っていた。ところがどっこい全く違った。とっても遠くからわざわざ「温泉ソムリエライダーひでみつさん」が来るくらいマラソン界隈の本気の皆さんは小さいとか大きいとか関係なくマラソン大会、ロードレース大会に参加するらしい。そして森町ロードレース大会は自然の中を走れるのでどちらかというと人気なんだとか。
会場に着くと本気の方たちや、そうでない方々がそこかしこで準備運動をしている。めちゃくちゃ凄い量の人でなんだかちょっと異様な雰囲気。そこで僕は思った。
え?本当に今からオレ走るの?
そして川崎さんと合流して、いよいよ「3キロ一般」の部が始まる。

スタートラインに到着。マジですんげえ人。いっぱいいる。かき分けて行かないと通れないくらいの人の量。え?みんな本当に走るの?応援?応援の方たち?と思うくらいたくさんの人。マラソン大嫌いな僕からすると正直信じられない。
川崎さんもこのやる気の表情。さすがほぼ毎年走っている男は面構えが違います。「え?どんくらいのタイムで走ってんの?」って聞いたら「大体17分くらいじゃないかなあ」だって。
・・・は?17分?
は?え?まって3キロを17分?え?結構本気のタイムじゃね?ちょっと待って。俺ジムのランニングマッシ―ンで3キロを時速8キロで大体25分くらいで走ってんだけど。え?マジで言ってる??
そんな事考えている間にパーン!というピストルの音が響く。え?俺撃たれた?なんてボケている暇もなくみんなも川崎さんも走り出す。
やばい。始まってしまった。
■走る。とにかく走る。
スタート付近は応援の方が多く「がんばって〜」とか「○○ちゃ〜ん」とか黄色や黄色じゃない声援が飛び交っていた。僕が直接応援されているわけではないがちょっと気分がいい。いや、むしろもっと応援して欲しい。むしろ俺だけを応援して欲しい。
ていうか言っていい?
川崎さん速え。
待って。この速度でずっと行くの?マジでいい加減にしてほしい。
しょうがねえ。俺も腹くくるぜ。川崎さん付いて行ってやんよぉ!って感じでずっと走る。
日ごろはランニングマッシーンでアップダウンも風の影響も前を走っている人を避けることもないから本当に自分のペースで走っていたもんだから、いざ本番のマラソンのこの感じ。
超疲れる。走ってすぐでもうバテ始める。
でも僕は、このマラソンを走る前に決めていたことがある。
絶対に歩かない。
そう。これも自分との「男の約束」である。これを破ったらお父ちゃん立つ瀬がなくなります。
絶対に歩かない。俺は絶対に歩かない。絶対に歩かない絶対に歩かない絶対に歩かない絶対に歩かない絶対に歩かない絶対に歩かない絶対に歩かない絶対に歩かないぜった
ねえ。もう3キロ終わる?もうそのコーナー曲がったらゴールある?いやゴールあって。そこに。その角の向こうにゴールがあってくれん?
そんな僕の願いは届くはずもなく、角を曲がった先にはもちろんゴールなどない。
絶対に歩かないと決めた僕。何でこんな事を決めてしまったのか。本当に自分を呪った。そしてなまじ地元なだけに初めてなのに「どこをどう走ってゴールに行くか」が鮮明に分かってしまう。ちょっと待て。まだまだやないか。まだ全然あるやないか。なんで俺は走っているんだ。なんで俺は走るなんて言ってしまったんだ。マジでやめればよかった。「爆風スランプ」のRunnerも脳内のどこからか聴こえ始めた。
そんな色々な想いがぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる駆け巡っている。そして気が付いたら川崎さんはいなくなっていた。おいおい川崎さん。
じゃあお先。
スタート地点を過ぎると応援の方はほぼいなくなる。ちらほらまばらにはいるが、ほとんどいなくなる。そして川崎さんもいなくなる。
孤独。どこまでも孤独。ずーっと孤独。
僕の前にも横にも後ろにもたくさんの人が走っている。「ゼヒー・・・ゼヒー・・・」って物凄くつらそうに走っている方もいる。
みなさん。何でこんなに辛いのに走ってるんですか?もう諦めかけている僕にどうか教えていください。
そんな事を思っていると数分後にスタートした小学生の部の本気の子たちがビュンビュンと今にも干からびそうな僕を抜いていく。お巡りさん。きっとあれはスピード違反です。めちゃくちゃ速いですよ。おかしいじゃないですか。僕より数分も後にスタートしたんですよ?
くそう。負けてたまるか。なんて思いながら子供たちの背中を追いかけて必死で足を前に出して走る。でも全然追いつかない。ビックルするくらい追いつかない。むしろどんどん引き離されている。
あと少し。あのコーナーを曲がったら坂を下って、そんでまたあのコーナーを曲がって、後はもうすぐ会場じゃん。あと少し。あと少し。なんて考えてたら目の前にゴールがあった。僕の人生初めての学校行事以外の「マラソン大会」が終わった。
よく言う「ゴールの後の達成感」も「走っている時の気持ちよさ」も全く感じることはなかった。やっぱりただただ疲れるだけだった。ちょっと期待していたのに。
ゴールの近くで川崎さんを待つ。
ん?
あれ?
一人だけ清々しい顔しないでよ。俺を置いて一人で清々しい顔をしないでおくれよ川崎さん。さすがほぼ毎年走ってるだけはある。本当にあんたはすげえよ。走ってもいないであんたのこと馬鹿にしたやつは俺が許さないから安心してくれ。
■自分のタイムに一喜一憂。

これが僕のタイム。速いのか遅いのか普通なのかも分からない。周りでは自分のタイムが不甲斐なかったのかライバルに負けたのか、めちゃくちゃ泣いている子たちがたくさんいた。ああ。僕には泣く程本気になったものが小学生の頃にあっただろうか。小学生の頃僕が本気で泣いたなんてドラゴンボールが観れなかったとかそんな理由くらいしかない気がする。この子たちはすごいなあ羨ましいなあなんて思いながら僕は運営の人からもらったスポーツドリンクをゴクゴクしていた。
とにかく言えることは「マラソンに参加する」「絶対に歩かない」という「男の約束」だけは守れたこと。これだけは本当によかったなと思っている。
そして、全く達成感も清々しさもなくただただ疲れただけのマラソン大会だが、こうやって記録という名の「数字」を目にすると「18分34秒か・・・来年は17分くらい切れるんじゃね?そうすっと・・・40位くらいまではいけるかもしんねえな」などと小学生の頃の僕からしたら想像もできない訳の分からない考えが鮮明に頭の中に浮かび上がってくる。なんでやねん。
しかたない。1年かけてジムで身体を仕上げるか。
ということで来年は「タイムを上げる」という男の約束が自分自身と交わされそうです。
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投稿を表示マラソンとバイクツーリングてなんか似てますね。
(競技とかで争ってるわけじゃなければ)遅くても問題ないし、やりとげるかどうかは自分次第だし。
自分はエンジン音とか聞きたくてバイク乗ってるので、人間として走ってる時も排気音とか吸気音とかしたら走る気になるかも(´-`)oO{
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投稿を表示序盤の途中から自慢話入ってて笑っちゃいました🤣マラソンはトップとビリどちらも拍手をもらえる競技ですから、来年はタイムを更新しつつビリでゴールするミラクルを成し遂げていただきたいです💪
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投稿を表示お疲れ様でした。
20歳位の時に奥武蔵駅伝に1度だけ出たことあります。
国道299緩い登り坂を5km走るのはほんときつかった笑
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投稿を表示超大作!!
自分も10歳…
15歳若かったら走ったかも😅